第119景 「赤坂桐畑雨中夕けい」
(安政六年(1859)六月)
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  名所江戸百景の中でただ1景だけ、二代広重の作品であることが明示され、落款に 「二世廣重畫」とある。このため、二代を襲名した披露の意味もある作品との見方がある。 このほかに、「市ケ谷八幡」「上野山した」「びくにはし雪中」について、改印が安政5年(1858) 10月(びくにはし雪中は11月)となっているところから、広重(安政5年9月6日死去)の没後であり、 構図、筆致、落款等からも、二代広重が描いたとする有力な意見もある。
  初代広重は第52景で桐畑を溜池の畔から南東に向かい、池の南端を望む構図をとったが、 二代は第119景で北の方角を見ながら溜池の北端を描いている。また、初代は桐畑の中に 立つ雰囲気であるが、二代は桐畑を一つの景色と見ている。
  近景に雨支度の通行人と桐の数株、中景のかすむ坂は現・赤坂見附交差点から赤坂御門に 向かう道で、右端に御門の屋根が僅かに覗いている。この御門の先を左に折れると諏訪坂で、 紀尾井町の語源となった紀伊家、尾張家、井伊家の中屋敷のある高台になる。 雨にかすむ森はこれらの屋敷の中であろう。シルエットの濃淡で遠近感覚を表している。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による