第115景 「高田の馬場」
(安政四年(1857)二月 冬の部)
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  この辺りは富士山がよく眺望できたところであり、雪で覆われた富士山が 描かれている。
  馬場の北側にあった風よけの松の一本を左側にクローズアップし、近景に的を大きく、 遠景に富士山を描いて対比の構図が鮮やかである。
  片肌脱いだ三人の武士が弓の練習中だ。大きな輪に皮を張ったもので的を作り、 的が壊れないようにするため、矢は先を布で包んだものを使用した。地面に落ちた矢が 散らばっている。絵では的に「布目摺り」の技法が施されている。中土手の南側では 二人の武士が騎馬ですれ違うところである。
  馬場の向うは下戸塚村の集落と雑木林、冬枯れた田圃が拡がっている。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による