第105景 「御厩河岸」
(安政四年(1857)十二月 冬の部)
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  隅田川に面して幕府の米蔵があり、その北に幕府の馬を飼っていた厩があったので、御 厩河岸といった。対岸の橋は二番堀の向かいにあった入堀にかかる石原橋(入堀は現在の横 網二丁目と本所一丁目の境にあたる)。北西にあった浅草寺界隈の入り口にあたり、対岸の 本所からも多くの人がやってきた。この絵は物悲しい感がある。
  宵の薄明かりに、手ぬぐいのような白木綿をほほかむりして(その端をくわえる)女性が 舳先にたっている。夜鷹とよばれ、本所石原町の奥、本所吉田町(大横川に近い、現在の石 原四丁目)から来ている。手ぬぐいのような布の端を<わえるには訳があり、遠景に人物を 描いた作品が多いなか、顔の白粉が目立つことがいっそう哀れを感じさせる。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による