第100景 「よし原日本堤」
(安政四年(1857)四月 冬の部)
--------------------------------
  堤にはよしず張りの編笠茶屋が並び、遊客を乗せた駕籠や往来する人々であふれるようである。 丁度、夜の帳がおり始めた暮れ六つ頃であろうか。遊女たちが店につく夜の張見世は 暮れ六つに始まった。
  絵の右側、堤の先に見返り柳が見える。柳は全部描かれていないが、木々、屋根と同じく 濃い草色で塗られている。その先に夜空を紅に照り返す別世界、不夜城吉原の重なり合う 屋根が煌々と光っている。また荒涼とした冬枯れた田圃、堀、寒月を渡る雁の群れの淋しさに対して、 堤の上を行く人帰る人の賑やかさ、編笠茶屋の明るい黄色が対照的である。
  江戸名所図会「新吉原町」に其角の句「闇の世は吉原ばかり月夜かな」がある。
--------------------------------
「東京シティガイド江戸百景グループ」による