第93景 「にい宿のわたし」
(安政四年(1857)二月 秋の部)
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  旧中川を挟んで亀有側か新宿側か、どちらから描いたか二説ある。「広重名所江戸百景」 (岩波書店)のヘンリー・スミス教授が「荷を満載した帆船は江戸に向っている」と唱え、「今とむ かし広重名所江戸百景帖」(暮しの手帖)もこれに共感している。つまり亀有説だ。亀有説 の根拠は2軒の料理屋だが、亀有説の宮尾しげをによれば左の2階家が千馬田屋、右手前 の屋根がふじみ屋と当てはまる。遠景の山については、新宿説の場合、秩父と陣馬・高尾 の2説、亀有説では筑波山(高橋誠一郎)、日光連山の男体山(ヘントスミス)説がある。
  一つ付け加えれば、「名所江戸百景」に描いた江戸の周辺部は、同じ旧中川の、中川口、 逆井の渡し、さらに川口善光寺、羽田など全て江戸から外を見て、広重は描いた。この「に い宿のわたし」だけ例外であるはずがない、といいたい。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による