第92景 「木母寺内川御前栽畑」
(安政四年(1857)十二月 秋の部)
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  画面は隅田川を背に内川を縦に望んでいる。右手は植半で、今しも二人の芸妓が座敷船 から降り立った。木母寺の堂宇は植半の右奥にある。内川の左手が御前栽畑。木母寺との 聞に架かる橋が描かれている。奥は内川に沿う堤が描かれ、堤内地の家は一段低く、堤の 向こうに屋根のみが見えている。堤の道を辿ると綾瀬川に達する。広重の「絵本江戸土産」 には御前栽畑に「作り松多くありて、もっとも美景いうばかりなし」との記述がある。
  秀作の呼び声高い「隅田川八景木母寺秋月」では内川の川上から見た橋、植半など料 亭の建物、船着き場などが描かれる。隅田川までの長い距離も実感できる。
  このタイトル、書籍によりふりがなが異なる。ヘンリー・スミス「もくぼじ、うちがわ、ごぜん さいはた」宮尾しげを「もくぼじ、うちかわ、ごぜんさいはた」人文社子「もくぼじ、 うちかわ、おんせんざいはたけ」暮しの手帖社は画題「もくぼじ、うちかわ、ごぜんさい はたけ」だが同書引用の広重「絵本江戸土産」のふりがなは広重が付けた「ごぜんさいは た、うちがは」。現代表記では「うちがわ」になる。これで決った。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による