第86景 「四ツ谷内藤新宿」
(安政四年(1857)十一月 秋の部)
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  象徴する事物を近景に置き、遠景にその場所を描く手法で、宿場内より四ツ谷大木戸 方面を見ている。そして、この「明和の立返り駅」をずばりと描いている。前景に 馬の尻を大きく写し出し、道路上には馬の糞を描いている。当時、馬の蹄には草鞋を はかせていた。価値観の違いからか、欧米人には下品だと評判が悪かった。しかし、 町の人々にとって「馬の尻」は日常茶飯事の風景であり、この絵を「巧い(ウマい)」と 褒めたと言う。
  馬の足の向こうに馬方の足も覗け、遠景にタキギを積んだ白馬も見える。
  道路の左側茶屋や旅籠屋(一番手前は「さなたや」)が続いており、それが途切れた先に 黒々とした内藤家か水番所の森が見える。道の奥は石畳となり、四谷大木戸があった。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による