第64景「堀切の花菖蒲」
(安政四年(1857)閨五月 夏の部)
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  綾瀬川の南東にある堀切村は花菖蒲で有名な村だった。隅田川の分流が何条も流れるほ どの湿地帯で、村こぞって四季の花を作って生業とした。花菖蒲の栽培に興味を持った一 農民の努力により、多くの品種を生み、立派な菖蒲園が出来上がった。絵では水辺をはさ んで中景に、江戸からやってきた観光客が花を愛でている。遠景の松は東の曳舟川か、西 の古綾瀬川に沿って植えられたものであろう。手前は19世紀になって開発されたと思われ る花菖蒲が、花鳥の名手広重らしく丹念に描かれている。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による