第55景 「佃しま住吉の祭」
(安政四年(1857)七月 春の部)
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  近景は島の海岸に立てられた「住吉大明神」と篆書された大幟。奉納した佃島氏子、安 政四年六月吉日の日付、整軒宮玄魚拝書の文字が見える。右端には赤地に三つ巴白抜きの 祭提灯が小屋根の下に下がる。「絵本江戸土産」によれば幾つかの祭提灯が横に並んで下が っている様子が分る。中景は神輿の海中渡御。神輿を中心として大勢の男達。遠景は左手 が深川や砂村地先の新田、それに続いて房総半島の低山が連なっている。島から東方を見 ているため停泊する船も少ない。
  大幟を書いた整軒宮玄魚とは、梅素亭玄魚という浅草厩橋の角で「梅素亭」という化粧 品店を経営していた文化人の一人で広重とも親交が深かった。「名所江戸百景」の目録を制 作したのも梅素亭玄魚である。この大幟がいつまで存続したか不明である。昭和43年(1968) の写真ではすでに使用されていない。現在の大幟は昭和62年(1987)に新調された。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による