第47景 「昌平橋聖堂神田川」
(安政四年(1857)九月 夏の部)
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  梅雨時か、雨の風景である。昌平橋は右手前に欄干がわずかに覗いている。正面に見え る坂は相生坂。坂沿いに連なる練塀の白さが印象的だ。練塀の奥は聖堂の木立である。
  急な坂とそれにも増して急峻な神田川の崖が効果的に表現されている。人手により掘削 したとは思えない風景である。
  船が留めてある場所は昌平河岸、舟運の荷揚げ場である。薪商人が集っていたため、薪 河岸の異名もあった。これより下流、神田川の南岸は柳原の土手が続くが、北岸の向柳原 は荷揚げ場が続いていた。中央の荷船の荷は薪とも見える。船を操る船頭は二人とも箕(ミノ) に身を包んでいる。坂の通行人は箕姿、傘、カッパ姿が観察できる。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による