第39景 「吾妻橋金竜山遠望」
(安政四年(1857)八月 春の部)
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  舟は竹屋の渡し近くの川の中ほどから、下流右側を望見している。絵は屋根舟の半分を 前景に大きく描いている。芸者と思われる女は半分しか描かれていないが、相手の人物は まったく描かれていない。この舟客たちは墨堤からの桜吹雪に酔いしれて、贅沢な舟遊び に興じている。が、視点は江戸の守り神の象徴的存在である富士山と江戸市中の信仰を集 めている浅草寺と五重塔に向けられている。当時の人々の信仰の深さや当時の広重の想い を「雪景色」と同じように、この絵からも見ることが出来る。下流に吾妻橋が見える。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による