第38景 「廓中東雲」
(安政四年(1857)四月 春の部)
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  絵は、東の空が少し紅くなりかかった頃、花魁風の遊女がおつきを2人従えて客を見送っている情景。 遊女は赤いうちかけを羽織り、黒塗りの駒下駄を履いている。格の高さがうかがえる。 男達は皆頬被り頭巾で顔を隠している。女は別れを惜しんでいるらしく、後朝の別れの つれなさが感じられる。また、春の夜明けの風情が情緒深く表現されている。
  絵の手前を横切るのは仲之町の通りで左に進むと大門がある。奥行方向は角町(スミチョウ)の通りで、 両側には遊女屋が立並び、入口に木戸がある。木戸の左は用水桶。角町通りにはたそや行灯に灯が ともっている。見送りの女の持つ提灯も明るい。仲之町通りの柵の中は植桜(植込まれた桜の木)で、 花がほの白い。右手の下草は山吹である。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による