第33景 「四ツ木通用水引ふね」
(安政四年(1857)二月 春の部)
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  この絵を描いた位置にも諸説出ている。「今とむかし広重名所江戸百景帖」(暮しの手帖) では旧・篠原村の辺りで当時の「現況」を捉えている。「広重の大江戸名所百景散歩」(人 文社)では記述は四ツ木村としながらも、地図上の位置を墨田区内に置いて矛盾している。 「名所江戸百景新・今昔対照」(太田記念美術館)は墨田区内「曳舟川通り」を載せている。
  しかし、「広重名所江戸百景」(岩波書店)のヘンリー・スミス教授の見解が最も納得できる ので、それに従って解説する。これは亀有村の終点近い曳舟川である。中景の屈曲部には船 着き場があり、引き船が何艘か泊っている。その先にある橋が水戸街道とするとうまく当 てはまる。近景はサツパコに乗る客と引く人夫。遠景の山はNo.15「日暮里諏訪の台」の左 に描かれたと同じ日光連山である。なお、直線の筈の川がカーブしているのは、No.97「小 奈木川五本まつ」と同様、画面構成上のデフォルメである。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による