第32景 「柳しま」
(安政四年(1857)四月 春の部)
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  掘割の幅が10間であることから十間川で知られている。南北に走る横十間川と北十間川 の合流点であり、亀戸村と柳島に架かっている手前の橋が柳島橋である。この橋のたもと にある料亭が会席料理で有名な「橋本」で、その手前に赤い塀に囲まれたところが俗称「妙 見様」である。この地を訪れる人々は屋根船を使って掘割を通ってくる。船着場の階段が 分る。妙見様の御利益を求めたり、亀戸の藤を見たりした人々はこの「橋本」へおちつき、 さらに気をかえて吉原へ繰出すということにもなる。
  遠景は墨をちらした淡い色彩で縁どられ、秋葉神社のある請地村の家々が木立に包まれ ている。彼方には筑波山が霞んで見える。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による