第31景 「吾嬬の森連理の梓」
(安政三年(1856)七月 春の部)
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  絵の題字は一般に「梓」(アズサ)と読んでいるが「樟」(クスノキ)とも読める。
  北十間川に2艘の猪牙船が浮ぶ。一艘は釣糸をたれている。もう一艘は西の方角へ離れ ていく。桜咲く土手に鳥居があり、そこから参道が延びている。参道には願掛けが叶えら れた人々の奉納した幟が林立している。参道の右は蓮池、左は日陰の田圃だ。小橋を渡る と幹が二股に分かれた大木が現れる。人々がそれを仰ぎ見ている。左手奥には本殿がある。
  広重の江戸近郊八景之内「吾嬬杜夜雨」はほぼ同じ風景を墨絵のように描いている。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による