第30景 「亀戸梅屋舗」
(安政四年(1857)十一月 春の部)
--------------------------------
  「東都名所亀戸梅屋舗全図」は上空からの俯瞰図だったが、この「亀戸梅屋舗」は高 所から地面に下りて臥竜梅をクローズアップしている。幹の曲がりくねった様子を前面に置 き、そこから伸びる枝には白梅の花を付けている。
  画画左上は「臥竜梅」の立札の一部である。遠景には梅を見ながら散策する人びと、茶屋 の床几に腰掛けて休む人たちなどが描かれている。
この絵は第58景「大はしあたけの夕立」とともに、ヴァン・ゴッホが模写したことで名 高い。広重は風景画と共に花鳥風月の名人であったことも、忘れてはならない。白梅の描 写にその片鱗が伺われる。
--------------------------------
「東京シティガイド江戸百景グループ」による