第29景 「砂むら元八まん」
(安政三年(1856)四月 春の部)
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  江戸名所図会を参照すると、この画が鳥居の北側から南東方向を描いていることがよく 分る。手前が元八幡東側を南下する道、奥は元八幡東南側を東方、中川に向かう道(元八 幡道)である。左手の落款の陰に水神の祠があった。桜並木が満開の花を付けている。堤 外は芦が生え茂っている。
  左手中遠景に張出す陸地をヘンリー・スミス教授(「広重名所江戸百景」岩波書店)は江戸川 の河口としているが、「東都近郊全図」(人文社「百景散歩」)を参照すれば、中川の東側(現・ 江戸川区)が南に伸びていると容易に判断できる。江戸川はその陸地の向う側になる。遠 景は江戸湾を隔てた房総の山並みである。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による