第27景 「蒲田の梅園」
(安政四年(1857)二月 春の部)
--------------------------------
  梅の木の背後に、いくつかの石碑がえがかれている。今の梅屋敷公園にも、石碑が、多 くは復元ながら散在する。当時からのものは、天保5年(1834年)の「麦住亭梅久」こと 「山本久蔵」の句碑であり、これは上述の山本久三郎と同一人物であるという(大田区史 編さん委員会編集「大田の歴史」)。
  絵の左手に池が見えるが、梅屋敷公園の中にも、かろうじてそんな場所がある。
  右手前にかかれた山駕籠については、さまざまな議論が出ている。人文社本(「広重の大 江戸名所百景散歩」)は「江戸の粋人が乗ってきて、梅見をする間待たせてあるものであろ うか」と記し、ヘンリー・スミス(「広重名所江戸百景」岩波書店)にいたっては「映画 的効果」と賞賛する。
-------------------------------
「東京シティガイド江戸百景グループ」による