第26景 「八景坂鎧掛松」
(安政三年(1856)五月 春の部)
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  天祖神社あたりの高台から東側(海側)を見下ろした風景である。絵の左側の海に突き 出た町並みが品川宿、海との境は東海道の松並木。海の先には房総半島の山々が見える。 どうやら八景坂と松の場所は、次の解釈で間違いないだろう(図版C参照)。
  絵の坂道は、北の品川方向へ向かって描かれているし、駕籠や馬、旅人などの通行人の にぎわいを見ても、八景坂=池上通り(上記@説)が自然である。鎧掛松が生えていたの はやはり大森駅北口駅ビル「ララ」であり、絵の茶店は野村證券あたりか。
  もしも「鎧掛松の根幹が天祖神社に残っていた」のなら、絵にある坂道は天祖神社への ぼる坂(上記A説)になるが、坂が品川へ向かっているのはおかしい。
  絵の右下に、小さく描かれた二人の人物がのぼってくる急坂がある。あるいはこれが柳 田國男のいう浜辺へ下りていくハケの坂(上記B説)なのだろうか。海側から八景坂(池上通り) へのぼってくる「絵とまったく同じ光景の急坂」の名残を3筋発見することがで きる。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による