第24景 「目黒新富士」
(安政四年(1857)四月 春の部)
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  中央に富士塚がそびえ、麓の水流は三田用水でである。用水の畔の桜は満開であり、 藤棚の下に床机が並ぶ。富士塚の中腹に弥勒を祀った祠と石碑が見える。
  中景は水を張った田園が拡がる。田圃の脇に林があり、屋根が望める。
  これについては2説ある。第1説は岩波書店版「広重名所江戸百景」で、当然の ように目黒不動としている。新富士からは1.5キロほどしか離れていないため、 目黒不動まで足を伸ばす人が多かったに違いない。第2説は栃木県・馬頭町広重美術館 開館一周年記念特別展「広重の画業展」図録で、林の中の屋根を祐天寺と解説する。確かに、 現行の地図によって、富士山と富士塚の相対的な角度から推測すると目黒不動は画面の 逢か左方に位置するところから、この屋根を祐天寺とする見方も有カといえる。
  遠景の富士山は春浅く、多量の残雪が望める。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による