第23景 「目黒千代か池」
(安政三年(1856)七月 春の部)
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  千代ヶ崎の斜面途中にあった池を描いている。段をなして落下する滝が斜面の 急勾配を表している。池の近くには桜の数株があり、花の盛りである。板を渡って 小島に渡ったのは身なりから察して商家の奥さんと娘、手前に佇む女はお供の女中だろうか。
  ヘンリー・スミス教授は池面に映る木の影に注目している。桜と針葉樹が水面に影を 落としているが、こうした技法は西洋画の影響を浮世絵師が受け、18世紀にはよく使われて いた。しかし、広重は余り好まず、名所江戸百景でも3景にしか現れていない。また、 影が実物を正確に反映しているようにも見えないため、広重が楽しみながら、 この技法を使ったようだと解説している。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による