第20景 「川口のわたし善光寺」
(安政四年(1857)二月 春の部)
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「名所江戸百景」の最北端の地であり、荒川の流れを描いている。
絵の主題は「渡し場」であるが、広重は水運の賑わいを優先して描いたとの解釈
も出来よう。絵の中心に荒川本流を描き、この水運を利用して、秩父の木材が筏で
千住宿近辺の材木問屋まで運ばれているようすが良く分かる風景である。
手前の茶屋は岩淵宿側の土手の茶屋で、渡し舟は出たばかりなのだろうか。
棒手振りは天秤棒を杖で支えている。対岸のの土手道を歩くのは善光寺の参詣者で
あろう。渡し船にも人が乗っている。
菊池貞夫氏によれば、広重は流れに浮ぶ筏の大きさを変えることで距離感を表し、
濃い藍によって川幅の広さと水の深さを強調している。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による