第19景 「王子音無川堰埭世俗大滝ト唱」
(安政四年(1857)二月 春の部)
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堰を流れる水の量と音の大きさなどから庶民は王子の大滝と呼んでいた。
この絵は音無川左岸の高台から、石堰と桜が満開の飛鳥山を描いている。
対岸(右岸)にある飛鳥山の茶屋は客も多く、賑やかさが分かる。堰の左
側奥には左岸上流にある王子権現別当寺、金輪寺、対岸には川に臨む茶
店が描かれている。
人文社版「広重の大江戸名所百景散歩」の観察では、滝壷で滝に打たれ
ている男は季節を考えると信仰上の理由からであり、流れの中の2人組
は、手前の組も奥の組も魚を獲っている様子であるとして、川に沿った
料理屋に納める魚とも考えられるとしている。
菊池貞夫氏は、緑の濃淡が絵に奥行を与えている、と評している。
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「東京シティガイド江戸百景グループ」による